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ロバート・キーガンの免疫マップ実践ガイド|「裏の目標」でペンが止まるPMのための言語化術

自己啓発(自己成長)

ロバート・キーガンの免疫マップ実践ガイド|「裏の目標」でペンが止まるPMのための言語化術

「書籍を読み、意気揚々とワークシートを広げたものの、第3列の『裏の目標』でペンが止まってしまった……」

今、あなたはこの記事を読みながら、そんなもどかしさを感じてはいませんか?

ロバート・キーガン教授が提唱する「免疫マップ」は、自分自身の変化を阻むメカニズムを可視化する強力なツールです。しかし、いざ独力で取り組もうとすると、自分の本音を言葉にすることへの心理的抵抗や、「これで合っているのか」という不安に直面しがちです。特に、責任感の強いプロジェクトマネージャー(PM)ほど、この「第3列の壁」に突き当たることが多いのです。

安心してください。ペンが止まるのは、あなたの能力が足りないからではありません。むしろ、あなたの「心理的免疫システム」が正しく機能し、あなた自身を懸命に守ろうとしている証拠なのです。

2026年現在、AIとの共創が当たり前となった変化の激しいビジネス環境において、リーダーに求められるのは「やり方(技術)」の習得だけでなく、「あり方(適応)」の変容です。この記事では、500人以上のコーチング経験から導き出した「裏の目標をあぶり出す問い」と、PM特有の事例を交え、あなたが独力でマップを完成させ、変革の第一歩を踏み出すためのガイドを提供します。

この記事を書いた人
  • kenji tanaka

    平凡な会社員から副業を経て個人事業主として独立。このブログでは、自らの経験を基に、あなたの「変わりたい」を一歩先で応援する情報を発信しています。


なぜ「免疫マップ」の第3列でペンが止まるのか?|脳の防衛システムを知る

免疫マップの第3列「裏の目標(Competing Commitment)」は、最も重要でありながら、最も書きにくい項目です。なぜなら、そこには私たちが無意識に隠しておきたい「自己中心的な本音」や「弱さ」が潜んでいるからです。

ここで理解しておくべき重要な概念が、「適応課題(Adaptive Challenge)」と「技術的課題(Technical Challenge)」の関係性です。

「部下に権限委譲できない」という悩みに対し、タスク管理ツールを導入したり、指示の出し方を学んだりするのは「技術的課題」へのアプローチです。しかし、もしあなたが「自分が直接手を下さないとプロジェクトが失敗し、自分の有能さが否定される」という恐怖を抱えているなら、それは「適応課題」です。

心理的免疫システムは、この「恐怖」からあなたを守るために、あえて変化を阻害する行動(第2列)をとらせ、裏の目標(第3列)を死守しようとします。つまり、ペンが止まるのは、あなたが自分自身の核心部分に触れようとしている正常な防衛反応なのです。

✍️ 専門家のアドバイス

【結論】: 第3列を書くときは、道徳的に「正しい」言葉を探すのをやめてください。

なぜなら、多くの人が「チームのために〜すべき」といった綺麗な言葉で第3列を埋めようとして失敗するからです。免疫マップのレバー(鍵)は、あなたのドロドロした本音にあります。「自分が一番だと思われたい」「責任を取りたくない」といった、一見わがままな言葉こそが、変化を動かす真のエネルギーになります。

「裏の目標」を独力で引き出す3つのセルフコーチングの問い

独力で第3列を突破するためには、論理的な思考ではなく、あなたの「感情(恐怖や不安)」をセンサーとして活用することが不可欠です。以下の3つのステップで、自分自身に問いかけてみてください。

ステップ1:恐怖の逆探知

「もし、第1列の目標(例:部下に任せる)を完全に達成してしまったら、自分にとってどんな最悪なことが起きる可能性があるだろうか?」

ステップ2:防衛行動の目的化

「その『最悪なこと』を絶対に避けるために、自分はどんな努力(=裏の目標)をしているだろうか?」
(例:自分の存在価値を失わないように、常に自分が一番詳細を把握していたい)

ステップ3:固定観念の特定

「その裏の目標を死守しなければならない、と自分に信じ込ませている強力な固定観念(Big Assumption)は何だろうか?」

不安から阻害行動へと至る心理的免疫のサイクルを回しているのが「強力な固定観念(=第4列)」であり、この構造を理解することが、マップを完成させるための背骨となります。

PMによくある「裏の目標」事例集と、固定観念を壊す「小さな実験」の作り方

多くのPMが直面する葛藤は似通っています。自分に近い事例を見ることで、「自分だけではない」という安心感を得て、具体的な行動(小さな実験)へと繋げましょう。

免疫マップの最終的なゴールは、マップを完成させることではなく、「小さな実験(Safe-to-fail experiments)」を通じて、第4列の「強力な固定観念」をテストし、書き換えていくことにあります。

悩み(第1列の目標) よくある「裏の目標」 強力な固定観念 小さな実験(テスト)の例
部下に権限委譲したい 自分が「不要な存在」になるのを避けたい 自分が細部まで把握していないと、必ず致命的なミスが起きる 1つの会議の進行を部下に完全に任せ、自分は発言せずに観察する
チームの残業を減らしたい 「仕事ができないリーダー」と思われるのを避けたい 常に忙しくしていないと、周囲からの信頼を失う 1週間のうち1日だけ、18時に「予定がある」と言って退社してみる
メンバーに厳しいフィードバックをしたい 嫌われて、チームの空気が悪くなるのを避けたい 相手の感情を害すると、二度と協力が得られなくなる 相手の強みを伝えた直後に、1点だけ具体的な改善要望を伝えて反応を見る

✍️ 専門家のアドバイス

【結論】: 実験は「成功」させる必要はありません。「検証」することが目的です。

なぜなら、実験の目的は「固定観念が100%真実ではない」という証拠を見つけることだからです。もし部下に任せてミスが起きても、それは「どうフォローすればいいか」という新しい技術的課題が見つかっただけであり、あなたの価値が否定されたわけではありません。この「実験を楽しむ姿勢」こそが、成人発達理論でいう「自己主導型知性」への入り口です。

免疫マップ実践に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 裏の目標が複数出てきて、どれが本命かわかりません。

最も「書くのが恥ずかしい」「これを認めるのは嫌だ」と感じるものを選んでください。その強い感情こそが、あなたの変化を止めている最大の免疫(レバー)です。例えば「部下を信頼していない自分を認めたくない」といった、抵抗感の強いものほど、変化のレバーになります。

Q2. 強力な固定観念がどうしても見つからない時は?

「もし、裏の目標に反する行動をとったら、何が起きると信じているか?」と自分に聞いてみてください。「〜したら、きっと〇〇になる」という「もし〜なら(If-Then)」の文章を作ってみるのがコツです。

Q3. 一人でやっていて、独りよがりなマップにならないか不安です。

最初は独力で構いません。ある程度形になったら、信頼できる同僚やコーチに「私の阻害行動(第2列)を見て、私が何を守ろうとしているように見える?」とフィードバックをもらうのが非常に効果的です。

まとめ:マップは自分を解放するための地図

免疫マップは、自分を責めるための道具ではありません。あなたがこれまで自分を守るために必死に作り上げてきた「有能さの防衛システム」を可視化し、そこから卒業するための「解放の地図」です。

今日、あなたが第3列に一言でも本音を書けたなら、それは既に大きな一歩です。

まずは明日、誰にも言わずに、あなたの固定観念をテストする「小さな実験」を一つだけ決めてみませんか?

世界は、あなたが信じているほど、あなたに対して厳しくはないかもしれません。固定観念が真実ではないことを確かめる冒険に、今、踏み出しましょう。

参考文献

  • ロバート・キーガン, リサ・ラスコウ・レイヒー (2009) 『なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践』 英治出版.
  • Robert Kegan and Lisa Laskow Lahey (2001) “The Real Reason People Won’t Change”, Harvard Business Review.
  • Minds at Work Official Website – Immunity to Change resources.
  • チェンジ・エージェント社 – 日本国内における成人発達理論・免疫マップの解説リソース.

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